2019年11月18日月曜日

YILハイパーブックレット ヴェテリナリ サージカル ギャラリー:イヌ:犬の胆嚢摘出術


YILハイパーブックレット - ヴェテリナリ サージカル ギャラリーの「犬の胆嚢摘出術」をお買い上げいただきまして、誠にありがとうございます。ここは本書巻末のQRコードから閲覧できる専用ページです。

本書は臨床現場や学術機関、研究所など、獣医療の現場で使えるよう、画像を中心に手術の情報をまとめた小冊子です。

本書で書ききれなかったことや修正したいこと、新たな画像や動画など、紙媒体では表現できなかったことなどをここに追記させていただきます。

ISBN取得

2020年からYIL出版は出版者登録され、ISBNを取得しました。
Ver. 20200520から奥付にISBN、表4にJANコードが印刷されます。
本書のISBNは
ISBN978-4-910237-14-5
となります。
内容については初版から変更はありません。














































撮影

静止画

ボディ

  • Nikon D500

レンズ

  • AF Zoom-Micro Nikkor ED 70-180mm F4.5-5.6D

ストロボ

  • SB-800 + Power bracket SK-6

動画

  • SONY HDR-AS50

撮影者

  • 山内 昭

YILハイパーブックレットについて

YILでは、古くから(KindleやHontoなどができるずっと前)YIL電子出版と称して出版社が作らない(発行部数が少なくて作れない)超マニアックな内容のPDFデータを製作・販売していました。たとえ数冊しか出なくても、それを有用であると思ってくれる読者がいる限り作っていました。電子ブックは紙の本と違い、データを提供するだけなので、売れなくてもリスクが少ない点がメリットです。最低でも数千部単位で印刷しなければならない一般書にはできないことです。
1990年代、コンピュータが普及し、世の中のものが急速に電子化されつつある時代です。その後、街中の書店がどんどんなくなって行きました。

しかし、そうなってくると人間は身勝手なもので、紙の本が恋しくなってきました。アマノジャクのようですが、旧人類の自分は、「やっぱりこれからは紙だな」と思いはじめることになります。
今まで出した本の経験から、活字マニア以外の多くの人は、写真や図とそのキャプションしか読んでいないということが分かっています。イグアナの飼育書を出しても、読者からは「本を読んだのですが、イグアナって何食べるんですか」という質問が多くて愕然としました。文章で書いても読んでくれないのです。
ならば、いっそのこと、写真とキャプションだけの本を作ればよいのか、と悟りました。
かくして、YILハイパーブックレットが誕生しました。

また、昨今のスマホ文化とも融合し、巻末のQRコードでインターネット上のページを見ることができ、追加情報や補足説明を見ることができるようになっています。場合によっては音声や動画情報を提供することも可能です。でもやっぱり元の媒体は「紙」にこだわりました。そんなコンセプトでYILハイパーブックレットを作り始め、飼育書や獣医学書、解剖写真集などの製作をはじめていました。

シリーズ

中島先生(通常ナカジ)とは20年来の付き合いですが、手術屋としてこだわりをもっている彼ですから、手術の場面を写真集として出さないか、と提案したところ、この Veterinary Surgical Gallery の企画が誕生しました。
手術の手技は、文章では表現できないことも多く、写真+キャプションというコンセプトはまさにぴったりだったようです。動画でしか表現できないものもありますが、気軽に見れないことと、細部をじっくり見たい場合は静止画の方が良い場合も多いのです。
術前に何度も見て、シミュレーションを行うためのツールとして役立てていただければ幸いです。
第一弾の「包皮転移による雄猫の会陰尿道瘻」はマニアックな内容ながら、求めている人にはこの上なく貴重な情報源になったと自負しております。
そして、第二弾「犬の胆嚢摘出術」は基本となる術式をコマ送りのような画像で丁寧に解説したブックレットです。こういった情報も、獣医学書などの成書にはなく、なかなかイメージできないものでした。このブックレットでは、はじめての人でも間違いなく安全に確実に手術ができることを目標に作りました。参考になれば幸いです。

今後も機会がある毎にマニアックなテーマで制作して行きたいと思いますので、ご期待くださいませ。

撮影のこだわり

「手術写真はどうやって撮っているの」とよく聞かれます。皆さん、無影灯下でうまく写真が撮れなくて困っていらっしゃるようです。はやり、スマホやコンパクトカメラでは限界があるのでしょう。
自分は医療カメラマンとして仕事をさせていただいているので、一眼レフを使用し、こだわりをもって撮影していますので、きれいに撮れて当たり前なのですが、気を付けている点はいくつかあります。

色再現

人間は血の色に敏感です。鮮紅色のバラが一番売れるそうですが、人間は血の色が大好きなのだと思います。そのため、血の色がちょっとでもオレンジがかって写ったり、紫がかって写っただけですごく違和感を感じます。肝臓の色、腎臓の色、消化管の色、筋肉の色なども、すべて元は血の色からできていますが、同じ赤ではなく、微妙にその臓器独特の色を持っています。術創はいつも大変カラフルで、微妙な色のせめぎあいで、大変美しいものです。それらはすべて人が覚えている記憶色なので、ちょっとでも違う色に表現されると気持ち悪いばかりでなく、病巣に見えてしまったり、病態ととらえられてしまったりと、間違った情報を与えてしまうことになります。
臓器の色を忠実に再現させること。それが医療カメラマンとしてのこだわりであり、使命です。

ポイントを拡大して写す

重要なところは大きく写したいのですが、手術中ですから、あまり術創に近づけません。ある程度離れた場所から拡大写真を撮る必要があります。そのために必要なのは、望遠マクロレンズと呼ばれるジャンルのレンズです。個人的には、20年以上も前に作られたNikonの名玉と言われている AF Zoom-Micro Nikkor ED 70-180mm F4.5-5.6D というレンズを使用しています。古い設計ですが、未だにこれを超えるレンズが世の中にないのです。望遠系マクロでありながら、ズームレンズです。

手術を撮影していると、局部だけではなく、少し引きで撮影しなければならないことがよくあります。そんな場合、通常の単焦点マクロレンズだと下がって撮らなければなりませんが、一般的に手術室は狭く、機器もあるのであまり自由に動き回れません。その点、このレンズはズームマイクロと言われている70-180mmのズームレンズです。そのため、撮影者が動かなくても局部のアップを撮ったり、引きの写真を撮ることができます。まさに手術撮影のために設計されたのではないかと思うほど使い勝手が良いのです。しかも、望遠側が180mmあるので、離れた位置からマクロ撮影が可能です。

ニッコール千夜一夜物語の第十八夜にも登場するおすすめのレンズですが、現在は製造されていないので、中古で探すしかありません。

術創だけを狙うのであれば、100mm程度の単体マクロレンズもおすすめです。

術創の撮影機材

症例報告や学会発表などで手術写真が必要なことも多いと思います。きちんと記録を撮りたいのであれば、一眼レフもしくはミラーレスのボディに、望遠マクロレンズ、ストロボを揃えることをおすすめします。無影灯下で正確な色再現で撮影できるスマホやコンパクトカメラは今のところありません。また、多くは広角気味なので、拡大して撮るために術創にかなり近づく必要があり、衛生的にもよくありません。
手術撮影においては、ボディは一眼レフでもミラーレスでも大差ありませんが、レンズは100mm以上の望遠マクロレンズを使用すると少し離れたところからうまく撮れるでしょう。
ストロボを使って、絞りを絞って撮影すると、無影灯の黄色被りもキャンセルでき、正確な色で記録することができます。

山内 昭